「会社をやめてしまってお金がない…」
「次の仕事の目途が立っていない…」
という事態は、誰にでも起こりうることです。
また会社の都合で退職しないといけなくなった場合も先々不安ですよね。
そこで役に立つのが失業保険!
「自分でも受け取れる?」
「どれくらいの金額がもらえるの?」
「手続きはどうすればいい?」
こんな疑問に答えていけるよう、これから解説していきます。
金額は? | 賃金日額の40%~80% |
支給期間 | 90~150日(自己都合)・90~330日(会社都合) |
申請のタイミング | 失業後 |
いつからもらえる? | 失業後3ヶ月と1週間(自己都合)・失業後1週間(会社都合) |
さかのぼれる期間 | 2年 |
条件 | ①過去2年間のうち12カ月以上雇用保険に入っている |
②就職しようとする積極的な意思がある | |
③ケガや病気、妊娠・出産など就職に困難な状態ではない | |
必要な書類 | ①雇用保険被保険者離職票-1,2 |
②マイナンバーカード(ない場合は※記事確認) | |
③証明写真(縦3cm×横2.5cm)2枚 | |
④本人の印鑑(スタンプ印不可) | |
⑤本人名義の預金通帳またはキャッシュカード | |
窓口 | ハローワークの窓口 |
目次
失業手当とは?
失業手当とは、会社勤めをしている間、雇用保険に入っていた人がもらえる給付金です。
仕事を失っても経済的な支えとなり、新しい職に就くまでの生活面をサポートする制度です。
退職の理由が大切
まず、失業手当を受取る前提条件として
- 過去2年間のうち12カ月以上雇用保険に入っている
- 就職しようとする積極的な意思
- ケガや病気、妊娠・出産など就職に困難な状態ではない
があげられます。
その上で、
退職の理由が
- 自己都合
- 会社都合
かによって異なりますので、それぞれ見ていきましょう。
自己都合による退職
自己都合による退職でも
- 一般理由離職者
- 特定理由離職者
の2つに分かれます。
自分がどちらに該当するか見ていきましょう。
一般理由離職者
一般理由離職は、自己都合による退職のことです。
「一般理由離職」には、自分が望む仕事内容・待遇を求めての転職や独立など、自己都合による退職が該当します。
一般的な転職の多くがこちらに当てはまります。
退職にあたり自分の意思に反する正当な理由(病気や家族の介護など)がある場合には、次に紹介する「特定理由離職者」として認められるケースがあるので見ていきましょう。
特定理由離職者
特定理由離職者は受給できる条件が、
離職の日以前1年間で、雇用保険に加入していた期間が「通算して6カ月以上あること」で受給できます。
自己都合による退職でも、
自分の意思に反する正当な理由がある場合は「特定理由離職者」に認定されます。
特定理由離職者には、主に以下の人が該当します。
- 有期労働契約の更新を希望したが、認められず離職した
- 出産や育児により離職し、受給期間の延長措置を受けた
- 父・母の扶養や介護など、家庭事情の急変により離職した
- 配偶者や扶養親族と別居生活を続けることが困難になり離職した
- 特定の理由で、通勤が困難になり離職した
- 企業の人員整理などで、希望退職者の募集に応じて離職した
会社都合による退職
企業の倒産や解雇といった会社都合によって退職し、
再就職の準備をする時間的な余裕なく離職を余儀なくされた人は、「特定受給資格者」に該当します。
失業手当が受け取れる条件として、
離職の日以前1年間で、雇用保険に加入していた期間が「通算して6カ月以上あること」で受給できます。
金額はどのくらいもらえるの?
失業手当の金額は、「賃金日額」という基準をもとに計算します。
賃金日額は、退職前の6ヶ月間の給料の総額÷180日です。
この賃金日額のうち、年齢や収入などを考慮したうえで
40%~80%相当が1日の手当(基本手当日額)となります。
賃金日額=1日あたりにもらえる金額を計算する基準になるもの
基本手当日額=1日あたりにもらえる金額
次に失業手当の総額をシミュレーションしてみましょう。
受け取れる総額のシミュレーション
失業手当の受給額は、「基本手当日額×給付日数」で決まります。
なお、基本手当日額と賃金日額には、それぞれ上限額と下限額が設定されています。(以下の上限・下限額は令和2年8月1日時点※厚生労働省のもの)
賃金日額、基本手当日額の上限額
離職時の年齢 | 賃金日額の上限額 | 基本手当日額の上限額 |
29歳以下 | 13,700円 | 6,850円 |
30~44歳 | 15,210円 | 7,605円 |
45~59歳 | 16,740円 | 8,370円 |
60~64歳 | 15,970円 | 7,186円 |
賃金日額、基本手当日額の下限額
賃金日額の下限額 | 基本手当日額の下限額 | |
全年齢共通 | 2,574円 | 2,059円 |
支給は何日くらいもらえるの?
失業手当がもらえる期間を「所定給付日数」といいます。
離職理由や年齢、被保険者だった期間などによって決まります。
それぞれの給付日数は以下のとおりです。
自己都合退職の場合
被保険者期間 | |||
10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
65歳未満 | 90日 | 120日 | 150日 |
会社都合退職の場合
被保険者期間 | ||||||
1年未満 | 1年以上
5年未満 | 5年以上
10年未満 | 10年以上
20年未満 | 20年以上 | ||
離職時の年齢 | 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
30歳以上
35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上
45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 | |
45歳以上
60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上
65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
失業手当がもらえる期間は、原則として離職日の翌日から1年間となっています。
失業手当はいつからもらえる?
失業手当は、退職理由によりいつからもらえるかが変わってきます。
〇自己都合による退職の場合
⇒失業後3ヶ月+1週間(待期期間)
〇会社都合による退職の場合
⇒失業後1週間(待期期間)
7日間は「待期期間」
受給資格決定日(離職票の提出と求職の申し込みを行った日)から、
7日間は「待期期間」と呼ばれ、離職理由にかかわらずすべての人が失業手当を受給できない期間となっています。
実際に手当が口座に振り込まれるのは?
実際に手当が口座に振り込まれるのは、申請から約1カ月後となるため注意が必要です
手続き・申請のながれ
失業手当を受け取るためには、ハローワークへの申請や説明会への参加など、所定の手続きを行う必要があります。
ここでは失業保険の手続きの流れや、申請に必要な書類を見ていきましょう。
申請の大きなながれは5つです
- 必要書類の準備
- ハローワークで手続きを行う
- 雇用保険説明会への参加
- 失業認定日にハローワークへ行く
- 失業手当の受給
①必要書類の準備
失業手当を受給したいと思ったら、まずは書類を準備しましょう。
必要な書類は5つです
- 雇用保険被保険者離職票-1,2
- マイナンバーカード
- 証明写真(縦3cm×横2.5cm)2枚
- 本人の印鑑(スタンプ印不可)
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
一つずつ見ていきましょう
①雇用保険被保険者離職票-1,2
離職票は2種類ありそれぞれ記入する必要があります。
発行方法や書き方は「マイナビ転職の離職票書き方」が分かりやすいので参考までに添付しておきます。
②マイナンバーカード
マイナンバーカードがない場合は以下☆と△が必要になります。
☆マイナンバーが確認できる書類(どれか1つ)
- 通知カード
- 個人番号の記載がある住民票
△身元確認書類(以下(1)がない場合は(2))
(1)1種類で可
- 運転免許証
- 官公署が発行した身分証明書
- 写真付き資格証明書
(2)2種類必要(1種類不可)
- 公的医療保険の被保険者証
- 年金手帳
③証明写真(縦3cm×横2.5cm)2枚
写真のサイズはハローワークで必用なサイズは履歴書用と異なります。
ハローワーク:縦3cm × 横2.5cm
履歴書:縦4.0cm × 横3.0cm
履歴書より一回り小さいので、履歴書用に撮影したものをカットして使うことも可能です。
写真は
- インスタントのスピード写真
- コンビニのプリントサービス
になるかと思います。
インスタントスピード写真
写真機を扱っているメーカーのサイトから設置場所を検索できます。
コンビニプリント
コンビニプリントができるサイト
- いつでもプリント ピクチャン (1シート履歴書サイズ 3枚:200円)
- Bizi ID (1シート履歴書サイズ 6枚:200円 12枚:300円)
④本人の印鑑
認印可、
スタンプ印不可
⑤本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
一部指定できない金融機関があります。(ゆうちょ銀行は可能です。)
②ハローワークで手続きを行う
書類が整ったら、お住いの住居を管轄するハローワークへ行き、以下の手続きを行いましょう。
- 求職申し込み
- 離職票など必要書類の提出
- 雇用保険説明会の日時決定
失業手当の給付を受けるためには、再就職の意思を示すため求職の申し込みが必須です。
また、次のステップとなる雇用保険説明会へ参加する必要があり担当者から案内があるため、日時などをしっかりメモしておきましょう。
③雇用保険説明会への参加
指定された日時に、雇用保険説明会に参加しましょう。
このタイミングで、「失業認定日」が決まります。
④失業認定日にハローワークへ行く
失業認定日にハローワークへ行き、失業認定申告書を提出して失業の認定を受けましょう。
失業の認定を受けるには、月2回以上の求職活動が必要で、失業認定申告書に実績を記載しなければなりません。
⑤失業手当の受給
失業手当は、失業認定日から5営業日後(自己都合退職の場合は3カ月後)に指定の口座に振り込まれます。
その後、原則として4週間に1回の認定日に、失業の認定を受ける必要があります。
うつ病のために退職したら給付日数がながくなる
うつ病で退職した場合は通常の離職者ではなく、就職困難者として扱われます。
就職困難者に該当する場合に、失業手当の給付日数が長くなるのです。また、それ以外にも
特別措置として失業期間中に求職活動を行わなければいけない日数が、
通常の4週間に2回以上に対して1回で良くなります。
うつ病のために退職された場合は、被保険者期間が1年以上であり、かつ退職時の年齢が45歳未満の場合で300日受給できます。
また、
45歳以上65歳未満であれば、給付日数は360日、ほぼ1年間受給できます。
では、1年未満の場合はどうなるの?
被保険者期間が1年未満でも退職前の1年間で被保険者期間が6ヶ月以上あれば、失業保険はもらえます。
ただし、その場合は年齢に関わらず、受給期間は150日となります。
うつ病での退職は自己都合や会社都合などの区別はない
自分から退職を申し出たとしても、
一週間の待期期間が終われば、すぐに受給を開始できます。
手続きに必要なもの
- 医師の診断書
- 精神障害者保健福祉手帳
精神保健福祉手帳
うつ病の診断をうけて6カ月が経過していると、
精神障害者保健福祉手帳を発行できます。
申請場所は市区町村に設置されている障害福祉窓口です。
手帳を持つことで得られるメリット
- 医療費の助成
- 交通機関の運賃が割引になる
- 携帯電話料金や上下水道料金の割引
- 公共施設の入場料の割引
- 一部、税金の軽減
よくあるQ&A
Q 失業手当受給中のアルバイトはOK?
失業手当の受給中、アルバイトなどで収入を得ることはOKです。
ただし、1日の労働時間や収入額によっては減額や、支給が先送りになることがあります。
また、就労時間が週20時間以上になるなど、雇用保険に加入するための条件を満たしてしまうと、就業したと見なされ失業手当の受給資格を失ってしまいます。
アルバイトをする場合は、収入の多少にかかわらず、
ハローワークへの申告が必要となります。
Q 再就職したら祝い金がもらえる?
失業手当の受給中に再就職をした場合、一定の条件を満たすと再就職手当(祝い金)がもらえます。
受給条件を見ていきましょう。
再就職手当の受給要件
再就職手当は、以下の8つの要件すべてを満たした場合に支給されます。
- 就職日の前日までの失業の認定を受けた後の基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あること
- 7日間の待期期間満了後の就職であること
- 1年を超えて勤務することが確実であると認められること
- 再就職先が前職と関係ないこと(前職の関連企業や取引先なども含む)
- 離職理由による給付制限を受けた場合は、待期満了後1カ月間については、ハローワークまたは許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介により就職したものであること
- 過去3年以内に、再就職手当や常用就職支度手当の支給を受けていないこと
- 失業手当の受給資格決定前から内定していた再就職先でないこと
- 雇用保険の被保険者であること
再就職手当の受給額は?
再就職手当の受給額は、失業手当の支給残日数によって変わります。
失業手当の支給残日数が3分の2以上の場合
再就職手当 = 基本手当日額 × 所定給付日数の残日数 × 70%
失業手当の支給残日数が3分の1以上の場合
再就職手当 = 基本手当日額 × 所定給付日数の残日数 × 60%
再就職手当の受給手続き方法
再就職手当をもらうには、所定の手続きが必要です。
再就職が決まったら、まずはハローワークに報告しましょう。
再就職先で「採用証明書」などの書類を記入してもらったうえで、
再就職の前日までにハローワークへ行く必要があります。
申請に必要なものは、
- 採用証明書
- 失業認定申告書
- 雇用保険受給資格者証
- 印鑑
再就職手当支給申請書に記入し、
ハローワークに提出することで再就職手当の申請は完了です。
再就職手当の申請が受理された場合、約1カ月程度で再就職手当が振り込まれます。
Q 失業手当受給中の健康保険や年金の支払いはどうする?
離職し失業手当を受給している間でも、基本的には健康保険や年金の支払いが発生します。
ただし失業中の健康保険の支払いについては、3つの選択肢があります。
①任意継続保険の利用
- 前職での健康保険組合の保険に引き続き加入する
- 保険料は会社負担がなくなるため全額自己負担になる
- 離職日から20日以内に加入手続きが必要
- 加入期間は最長2年間
②国民健康保険に加入
- 前職での健康保険を脱退し、国民健康保険に加入する
- 解雇など会社都合による離職の場合、保険料が減免される可能性がある
③配偶者の扶養家族になる
- 配偶者が加入している健康保険の扶養家族になる
- 失業手当は収入と見なされるため、扶養家族の収入制限にかからないか条件を確認する必要がある
国民年金や住民税は、自治体によって支払いの免除や納付を待ってもらえるケースがあるため、市区町村の窓口に相談してみましょう。
失業手当の注意点
失業手当受給における注意点について見ていきましょう。
よくある失業手当がもらえない原因は以下のようなものになります。
- 雇用保険の必要期間を満たしていない
- 会社が雇用保険に入っていない
- 会社都合退職なのに自己都合退職にされていた
- 事情によりすぐ働けない
①雇用保険の必要期間を満たしていない
失業手当をもらうには、雇用保険に1年以上加入していなければいけません。
②会社が雇用保険に入っていない
会社によっては従業員の雇用保険加入手続きを怠っていることがあります。
ただし、退職後に未加入であったとしても過去にさかのぼって加入することも可能です。
③会社都合退職なのに自己都合退職にされていた
稀なケースですが、会社都合の退職にも関わらず、離職票に「自己都合退職」と記載されている場合があります。
会社に訂正を求めるか、ハローワークの担当者に相談しましょう。
④事情によりすぐに働けない
傷病や出産、育児、定年退職など、すぐに働けない場合は失業手当は受け取れません。
失業手当は「就職する意思と能力がある」ことが前提となっています。
そのため、求職活動を行わないなどの行為が見られた場合、例え給付中であっても中止される場合があります。
また収入や就職の未報告、虚偽の申告などをした場合、全額返還を求められるので
まとめ
失業手当の申請は意外と大変です。
ですが就職先を探している方にとっては心強いものです。
無理のないよう、自分のペースですすめていきましょう。
少しでも申請する方の手助けになればと思います。